ツタンカーメン伝 

 エジプトである。なぜエジプトか?私の事を知っている人なら分かるかも(笑)

ツタンカーメンは、エジプト新王国時代(18〜20王朝期)の18王朝に王位についた、最年少のファラオである。9才のときである。その時期は、エジプトの内部から崩壊しはじめ、ヒッタイトが今まで支配してきた近隣国へ侵入、その国力の弱小化が進んだ。

ツタンカーメンは、アメンへテプ3世(在位BC1417〜1379年頃)の息子とされ、アメンへテプ4世の王妃ネフェルティティに引き取られて育ったとされるが、詳しい出生は謎である。

 

 

アメンへテプ3世の時代には、国家神である首都テーベの守護神アメン神を司るアメン神官が、政治を左右するようになっていた。それに反発したアメンへテプ3世が、テーベを抜け出し、対岸のマルタカに王宮を造った。
彼は、マルタカ王宮で、アメン神ではなく、太陽神アテンを信仰し始める。

 亡父アメンへテプ3世の後を継いだアメンへテプ4世は、アテン神のみを信仰の対象とする強力な宗教改革を推進していく。
またアメンへテプ4世は、自らの名前「アメンへテプ=アメン神は満足するという意」を「アクエンアテン(アクナテン)=アテン神にとって好ましい者」と改めている。そして、首都をテーベから現在のアマルナに移し、新しい国づくりを推進していくのである。
 しかし、国力の弱まったエジプトの同盟国がヒッタイトの侵入により次々と失われ、強制的な宗教改革の結果、政治的にも失敗し、エジプトは崩壊の一途をたどることになる。

このアメンへテプ4世(アクナテン)には、王妃ネフェルティティとの間にアンケセパーテンという王女がいた。この王女が後に母ネフェルティティに替わって、父王の妃となったため、次期王位継承権を握っていた。
 当時11才だった王妃は、父王の没後、母のところで育てられていた、年の頃も近い少年、トゥトゥアンクアテン(後のトゥトゥアンクアメン=ツタンカーメン)と結婚することになる。この幼き少年が王となったわけである。

アマルナで即位したトゥトゥアンクアテンは幼いため、到底アメン神官団の圧力には抗いきれず、テーベに引き戻されるような形で、アメン信仰に復帰し、その名を「トゥトゥアンクアメンツタンカーメン」と改めたと言う経緯がある。

即位後、早世してしまった、少年王トゥトゥアンクアメン。その死因は、撲打による暗殺が有力ではあるが、決定的なことはわかっていない。

この後を継いで王位に就いたのは、王四代に仕えた重臣アイである。老齢のため即位四年で死亡した。

その後を継いだのがホルエムヘブ(アメンヘテプ4世に仕えた将軍)である。

ホルエムヘブは、第18王朝最後の王として、国内に一種の恐怖政治を敷き、国内の動揺を押さえつけて、故国を窮地から救った。その後、彼の後継者であるラムセス家はエジプト黄金期を作り上げた。

彼は、アメン信仰の復活を推し進める中で、アテン神殿やアマルナ時代の建造物をことごとく破壊、アテン神排斥に消極的だった「トゥトゥアンクアテン」や「アイ」、さらには「アメンへテプ4世(アクナテン)」の名を除去して、その上から自らの名を刻ませてしまった。

こうして幼き少年王トゥトゥアンクアテンの名は、後世の王名リストから除外されてしまったのである。

完。

おまけ。

しかし、トゥトゥアンクアテンの名を全世界に知らさしめた男がいる。ハワード・カーターである。

★ハワード・カーター氏略歴。

ハワード・カーターは、1874年にイギリスで画家の子として生れる。

彼は、エジプトのファラオの王墓にある壁画などの複写をして、徐々に実績が認められていく。

そうして、エジプト考古局の監督官に任命されたが、観光客との喧嘩をきっかけに辞職する。

その後、カーターは、考古学に興味を持つカーナヴォン卿と出会う。

そして、カーターは、カーナボン卿の要請を受け、彼の援助の下で、再びエジプトで王墓の発掘を始める。

その15年後の1922年11月4日、彼は、ついにトゥアンクアテン王の墓の発見に成功した。

その後、彼は発掘品のクリーニングや修復を10年間かけて行い、1939年に死亡した。

 

ツタンカーメンには、まだまだ分からないことが多い。

その最たるところが前途したように、死因である。暗殺なのか、病死、事故なのか、未だ以って解明されていない。

また、ツタンカーメンの後継者についてのヒッタイトとの関係などもわかってない。

 ツタンカーメンの墓が発掘されたことによって、彼の遺品が沢山発見されたが、それでもまだ一部である。

 有名な言葉がある。「1000年たっても、エジプトから発掘者はいなくならないであろう」この言葉は、エジプトの空白部分を如実に反映しているであろう。

 ツタンカーメンをはじめ、エジプトのファラオたち、彼ら謎が解明されるのにはいまだ膨大な時間を要するであろう。


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